*** 1 ***

気が付くと、おれはパンツ一丁でボーっと空を見上げていた。
雲一つない青空、そこかしこに椰子の木が生えており、海が近いのか潮の音が聞こえてくる。
オレの背後にはでかい城のような建物があり、すぐ近くにはスライムがのんきに散歩なんてしてやがる。

あれ?オレ、何してたんだっけ?
なにかをしにここにきたと思ったんだが...

オレが物思いにふけっていると、回りにいたスライムがオレに気付いたのか、近づいてきやがった。
スライムごときがオレ様に喧嘩を売ろうとは片腹痛ぇ!
ちゃっちゃと殺してやろうじゃねぇか!

と張り切って攻撃しようとしたが、そう、おれは何も持ってなかったのよ。
パンツ一丁だしな。オレははだかの大将かっての!!

ぎゃああっーー!!

服も何も着てないので、スライムの粘液で肌が焼けていく!
くそ!このまんまじゃたかがスライムが相手といえどやられちまう!

しょうがなく、オレは背後にある建物に避難することにした。

*** 2 ***

建物に入ると体力がどんどん回復していく...

ふう、死ぬかと思ったぜ!
しかし、一体何でオレはこんなとこでボーっと突っ立っていたんだ?
ちょっと前のことを思いだしてみるか。

えーと、確かあれは....

*** 3 ***

そこは狭い通路だった。
目の前に大きな扉がある。
そう、毎度エンディングを見るためだけにあの魔女をブッ倒すところだ。
さて、じゃ、今回もサクっといってみっか!

って、今回は初めからやろうとしてたんじゃねえか。なんでデータがロードされるんだよ!
確か何か起動方法があった気がするんだが...
取り敢えず取説でも読んでみるか。
と、意気込んでパッケージを開いたが...

あれっ?取説がねえぞっ!!
そう、管理不行き届きで、パッケージとディスクはあるんだが、取説だけが見つからねえのだ。
うーん、確か何かキーを押しながら起動するんだったよな。

オレはあたりかまわずキーを押しながら起動してみた。シフト・CTRL・COPY...
リターンキーを押しながら起動したとき、変化が現れた。
タイトル画面が出てきたのである!

おおっ、やった、成功だ!!

そして、ストーリーが流れはじめる。



ここは4カ国からなる島である
毎日、平和な日々が繰り返されていた
ある時 謎の青い玉が飛来してきた
しかし、この事に気付いた者はいなかった
そして数年の月日が過ぎていった
青い玉は 時を経るにつれ魔力を高めていた
数年後のある日 青い玉を拾った一人の女がいた
彼女は青い玉に封じ込められていた力を使い
世界を 思うがままにしようとしている
それを食い止めなければ・・・



そーか、よーするにその女を殺っちまえばいいわけだ。簡単なこったな。

で、そのまんま見続けてたら画面がフェードアウトして...

*** 4 ***

ああ、そうだ、あのまんま見続けてたら、いつの間にかパンツ一丁で突っ立ってたんだな。
しかし、いくら最初は何も持ってないのがRPGの王道だからって、パンツ一丁で旅に出させるか、ふつー?
確かにリアリティはあるかもしれねーがよ。

こんなところでいつまでも時間をつぶしていてもしょーがねえので、取り敢えず、この建物に別の入口があったからそっちに入ってみるか...

*** 5 ***

とりあえずすぐ近くにあった入口から城の内部へ入ってみることにした。

内部は細い通路になっており、奥にはドでかい扉がある。その前で魔法使いふうの格好をした赤毛のジジイが突っ立っている。

「よくきなさった。若者よ!剣をとって戦うのじゃ。この剣と、衣をやろう。」

と言って、「短剣」と「衣」をくれたぜ!!ラッキー!!
そうか、このゲームはあちこちいる奴等に話してアイテムをいただきながら進めて行くんだな。
ところで、この後どうしたらいいか知ってるか?この扉の奥に行く方法とか?

「なぜか、この中に入れんのじゃ。どうしてかのぅ・・・入る方法をさがし出してきてくれ。」

ジジイでもわからねぇか。ま、とりあえずの装備が手に入っただけでも収穫だ!
さっきオレに手傷を負わせてくれたスライムどもめ、待ってやがれぇ!

オレは勇んで城の外へと向かった。

*** 6 ***

いるいる、スライムどもがうようようろついてるぜ!装備のある今、お前達はオレの敵じゃねぇ!
スライムどもは、オレに攻撃を仕掛けるが、服を着てるからダメージも受けねー。ざまあみやがれってんだ!!
それじゃ、こっちから攻撃しかけさせてもらうぜ!

スカッ
あれ、ミスったか?

スカッ、スカッ

なにぃ!!この短剣じゃ歯が立たねぇだぁ!?
くそっ、あのオヤジ、スライムにもダメージを与えられないような、なまくらを持たせやがって!!

ちっ!この短剣で脅してもっとマシなもんを出させるか...ってスライムごときに歯も通らねえなまくらじゃ脅しにもならねぇよ...

とりあえず、オレはスライムを倒すのを諦め、まともな剣を探すことにした...

*** 7 ***

スタート地点の城から程なく離れた山あいに、ラフェールとかいう男がいた。

「この長剣って以外と使い道がないんだよなぁ。君にやるよ。」

おおっ、これこそオレの欲しかった剣ってやつよ!!
これでまともに戦えるぜ!!
まだ何か持ってねぇか?

「あっ、そうだ北の国の洞窟に、ぼくの妹がいる。魔法の杖を、もらうといい。」

ほぉ、魔法の杖か。それがありゃ、わざわざ敵に近づかなくても簡単に殺れるな。
有用な情報だ。ありがとよ!!

「がんばれよ。」

あぁ。あんま気が進まねぇがな。

*** 8 ***

長剣を手に入れてから、周辺のスライムどもはまさしく雑魚に成り下がったぜぇ。
だが、スライムを倒して初めて気が付いたんだが、どーやらこのゲーム、敵を倒してもあんまりメリットがなさそうだ。
金も無ければ経験値もないんで、敵を倒しても体力回復の玉が出るだけだ。なんだかなぁ。

まあ、戦ってもしょーがないんで殺さずに無視して歩いてら。

そこらへんをてきとーにうろついてたら、山あいの谷にひっそりと洞窟があるのが見えてきた。
洞窟といえば、お宝がたくさんあるにちがいない。
気軽な気持ちでオレは洞窟に入っていくのであった...

*** 9 ***

洞窟の中はかなり狭くなっていた。しまった、こんなところで敵に出くわしたらかなりやばいぜ...
今着ている衣はスライムごときの攻撃を防げても、おそらく他の敵には通用しねーだろうし。
うーむ、何か無謀な気が...
しかし、この洞窟に入らないと多分話がすすまないだろうし、困ったもんだ。
仕方なくオレは洞窟の奥へと踏み込んでいった。
これからこの洞窟のことを「無謀の洞窟」と呼ぶことにしよう(^^;

だが、さぞ強い敵が出るだろうと思ったが、出てくる連中は蜘蛛とか蝙蝠、ゾンビ・ミイラの類だ。
ま、RPGで言ういわゆる雑魚連だな。らくしょー!

この洞窟で「木の盾」「レザーアーマー」が手に入ったぜ。これでよーやくいっぱしの剣士の格好になった。
他には「リストラティブ薬」なんてものがあった。いわゆるエリクサーってやつだな。
さらには「アウラのお菓子」なんてものまで!!しかしよぉー。こんな洞窟に落ちてるお菓子なんてだれが欲しがるんだよ?どー考えても腐ってるかカビてるかしてるよな。
まあ、何かしら使うからアイテムとしてあるんだろう。

一通りアイテムを集め終わったので、オレは洞窟を後にした。


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